第18話「生命力」

【僕たちは母を介護する】-18「生命力」 僕たちは母を介護する
【僕たちは母を介護する】-18「生命力」

《3日目》

弟ともに、病院へついた。
11時前。
三男夫婦も同じ時間だった。

集中治療室へ向かい、面会を告げる。
やはり忙しい時間帯のようだ。
少し待つように言われ、控室に行った。
30分ほど待った。
「面会は難しいかもな」
弟たちに向けて、つぶやいた。
それから15分ほどたったとき、看護師さんが
「どうぞよろしいですよ」
と呼びに来てくださった。

御袋の状況は変わりない。
少し目を開けたので、
「見舞いに来たよ。がんばれ」
とだけ声をかけた。
次男は、手をさすっていた。
私も触ったとき冷たいと感じた。
三男も声をかけ、私たちは控室に戻る。

「手が冷たかった」
次男がそう話しかけてきた。
「そうだな」
私がそう答えると
「母は寒がりだから、暖かくしてもらうように言おうか」
次男が心配してそう言うので
「そうだな、でも冷たいのはおそらく点滴のせいもあるだろう。部屋は暖かいし、布団もかけてあった。大丈夫だよ」
私は以前、自分が点滴をしたとき腕が冷えたことを思い出し、そのことを説明した。
しかし、根拠はなかった。
ただ、心配で心をふさぐのは辛いだろうと思い、そう告げた。
でもそれで納得したようだ。

処置は13時からで1時間程度だった。
控室にいると、担当の先生がこられた。
立ち上がると、
「お腹をふさいでいたシートは取り替えました。特に異常はありませんでした。」
先生がそう言われたので
「そうですか。ありがとうございます。」
と礼を言った。
「まだ血圧が低く、高濃度の血圧を上げる薬をいれています。もうしばらく様子をみます」
そう言われた。
私たちは、もう一度礼をいい、病院を後にした。

《4日目》

(あれから4日か)
時間が経つのが早い。
次男と病院についてそう思った。
三男が少し遅れてついた。
今日は面会だけだ。
御袋の様子は変わっていないように感じた。
血圧は正常と思われる値を示しているが、薬のせいだろうか。
そう思いながら、面会を終えようとしたとき先生が来られた。

「血圧は良くなってきています。昨夜から少しずつ血圧を上げる薬を減らしました。」
「そうですか!」
私たちは、安心した。
(すごいな御袋、大した生命力だ)
心の中で、そう喜んだ。
「明日の午前中、状況をみて問題なければ午後から人工肛門を造ります」