第57話「ケアカンファレンス」

僕たちは母を介護する

退院前日。

時間どおりに病院へ着いた。
受付に声をかけると、食堂に通された。
今は食事時間ではないので、誰もいない。
しばらくすると、ケアマネジャーが入ってきた。

「こんにちは、お世話になります」
「こちらこそ昨日は電話ありがとうございました」
挨拶を交わすと、続いて相談員のほか数名が入り、最後に車いすに乗った御袋が看護師に押されて入ってきた。
全員で10名程度になった。

相談員が挨拶し、「カンファレンスを始めます」と言った。

最初に看護師が、発病から転院までの概略を説明した。
そして、先日の体調不良、その後の食事量や注意している点、血圧などを語った。

次に作業療法士がリハビリの状況を伝えた。
始めは平衡歩行を行い、リハビリ開始後1か月で歩行器訓練をすると、30m程歩いたと伝えた。
しかし、先日の体調不良からリハビリができず、回復した現在も活気がなく、寝たきりの状態になってしまっていると言った。

最後にケアマネジャーが、訪問介護、訪問看護の業務内容や日程を説明した。

専門用語ではないのだろうが、聞きなれない単語などがあり、その場で理解するのは難しかったが、私は聞いた内容をひたすらにノートに書いた。
あとで、読み返しわからないことは調べればいいと思った。

カンファレンスは1時間で終わった。
文字にすると短い(一部記録もれもあるかもしれないが・・・)。

ここに、同居する次男がいないことは少し不安だったが、実際はヘルパーや訪問看護の方がいる。
慣れないうちは、私が対応すればいい。
そう思って病院をあとにした。

自宅に帰り、ボーっとしながら疲れを癒していると病院から電話があった。
時間は18時過ぎだ。
何かあったんだろうかと思い電話に出た。
「遅い時間にすいません。明日の退院により入院費の支払いについてご連絡しました」
わかっていたことだが、『きたか』と思った。
「はい」
そう答えると、請求金額を伝えてきた。

ある程度予想していたがかなり高額だ。
期間が長いとはいえ、手術した時の3倍の金額。
「いつ頃お支払いすればよろしいでしょうか」
冷静さを取り戻し尋ねた。
「通常は、明日退院される時にお支払いしていただくのですが・・・高額ですので、明日の支払が難しい時は誓約書を書いていただくことになります」
「わかりました」
そう言って電話を切った。

次男とは前回の入院の時も話したが、手続き関係は私が、金銭管理は御袋と同居する次男と役割を決めていた。
しかし、明日の支払をすぐに用意させることは難しい。
ひとまず私が立て替えることにし、今日のカンファレンスの内容と、入院費について弟にメールを送った。