第53話「ストーマ交換訓練」

僕たちは母を介護する

1回目のストーマ交換訓練から5日後、相談員から電話がかかってきた。

「ケアマネージャーと訪問看護事業所が見つかりました。それで、27日にご家族と、病院、ケアマネージャーとの打ち合わせを行います」
急なスケジュールだ。介護看護の世界はこんな急なスケジュール調整をするものなのだろうか?
27日といえば1週間後で、翌日は退院日だ。

介護ベッドや退院後の生活、その他想像できない事がある。初めての事なので不安にならない方がおかしいと思い尋ねた。
「介護ベッドや介護支援が必要な障がい者の退院後の生活など、わからないことだらけですが、退院日の前日に打ち合わせで大丈夫なものでしょうか」
「そうですね。それでは、明後日のストーマ交換訓練の日に、ケアマネージャーと打ち合わせできるか確認しましょうか」
「そうしていただけると助かります」

電話を切ったあと、次男にスケジュールと内容をメールで連絡した。
「了解」とだけ返信があり、出席するような回答はなかった。

ストーマ交換訓練の日。
病室に行くと、すぐに先日の看護師が入ってきた。
「今日は実際にやってみましょう」
前回と同じで、入浴後のためストーマはすでに外されている。

以下が、実際に行った内容だ。

〇ストーマ交換訓練
 ※手袋をしての作業
 ・パウチサイズ円形の型でマーキングし、ハサミで切り取り
 ・切り口を指でならす
 ・ドーナツ状のシール(グミ状)を人工肛門の大きさになるよう、中心の円を広げ人工肛門周辺にしっかりと貼る
 ・パウチの排出部(マジックになっているところ)を閉じる
 ・パウチのシールをはがし、人工肛門に貼り付ける
 ・貼り付ける時の向きに気を付ける
 ・貼り終えたら、おむつを治し、手で30分ほど押さえてもらう

途中、看護師から指示があったが、それほど難しくはなかった。
これなら弟にも教えるのは簡単だ。
ただ、つける作業は大丈夫だが、外す作業の注意点などあるのだろうかと思い、質問すると外す作業のほか、便の処分などいろいろ教えてくれた。

〇パウチを外すとき
 ・パウチを外すときは、剥離剤を使う
 ・人工肛門をおよび人工肛門周りも洗浄洗いをし綺麗にする
〇パウチの交換頻度
 ・週2回程度 現在は水曜と土曜の入浴時
〇パウチ内の便は溜まったら処分
 ・排出部のマジックを外し、便をビニール袋にいれる
 ・排出部の入口を綺麗にする
 ・マジックをつけて戻す
 ・便の入ったビニール袋は燃えるゴミで
 (※紙おむつなどと同じだが、市町村の取り扱いで異なる)
〇導尿バッグの交換について
 ・一日一回は排出すること
 ・排出するときは、尿瓶などにいれてもいい
 ・導尿バッグが膀胱より上にならないようにすること
 ・カテーテル内に浮遊物がたまり導尿バッグに尿が流れないこともあるので、たまに浮遊物をバッグに流す

会話でのレクチャーだが、とてもわかりやすかった。

訓練が終わり、御袋に話しかけた。
先日の体調不良から顔色もよくないように感じる。
「ストーマの付け方は覚えたよ。体調の方はどう?」
「あまりよくない」
見てもわかるぐらい衰弱しているように感じた。
看護師の話では、体調不良の日から昨日まで点滴をしていたようだ。
1週間、点滴をしていたことになる。
その間、口からの食事はしていならしく、今朝が1週間ぶりの食事だったようだ。
「検査もしましたが、異常はなにもみられませんでした」
異常がないのであれば正常であるということではあるが、吐いた原因はなんだったのだろうか。
御袋の話では、食事に入っていたものがだめだったのかもと言う。
しかし、よくわからないようだ。

御袋は精神的に強い人ではあるが、気になったりするとそれを原因に遠ざけたり、自分が納得したものでないと試したり、考えなおしたりしない。
その判断基準が私たちにもわからず、御袋がまだ元気な時は同居している次男としょっちゅう言い合いをしていた。

すっかり忘れていたが、私もそんな環境が嫌で家を出て自立した。
もう30年以上前のことなので覚えていなかったが。
御袋はたまに実家にくる、私や三男に対してはそうでもない。
また、次男が若い頃、外で一人暮らししているときも、優しいというか、いい関係性だったと次男に聞いたことがある。
これ、といった理由がわからなかったが、親子関係において仲睦まじいものではなかった。
と言っても、どこの家庭、親子もそんなものかもしれないが。