少しずつだが御袋の具合は良くなってきている。
リハビリで立てるようになってきた。
転院してからの見舞いはかなり減ったが、また感染症が流行し、ついに面会が禁止された。
病院からはタオルの洗濯で連絡があるが、それ以外に連絡はない。
何もないのは順調ということだろう。
そして、2週間ぶりに面会が再開された。
スケジュールの都合ですぐに面会には行けなかったが、そんなある日、御袋から電話がかかってきた。
何かあったのか?と思いながら仕事中だったが電話に出た。
「どうした。何かあった?」
久しぶりだったが、仕事中でもあったため、まず要件を聞いた。
「今日、何とかワーカーという人と話をしたけど、今月いっぱいで退院するって」
え!?、突然のことで驚いたが、まずは喜ぶところだ。
「そうなんだ。それはよかったね。おめでとう」
「うん、退院後の生活支援のこととか、自宅の段差とか話したよ」
「そうか、それで・・・どうすればいいのかな」
御袋とソーシャルワーカーとの間で話が進められるとも思えない。
「その人と話してくれる?」
「うん、わかった。俺の方で話を聞いてみるよ」
「退院できて嬉しい」
「そうだね。おめでとう。退院までゆっくりしてね」
そう言って一旦電話を切り、少し考えた。
まだ、自力で生活できるまで回復しているとは思えない。
ある程度歩けるようになったのだろうか。
しかし、いろいろ考えても仕方ない。
仕事が終わってから病院へ連絡することにした。
病院へ電話をし、母の名前とソーシャルワーカーについて尋ねると、相談員という方に代わった。
「今日、母から連絡があって退院と聞いたのですが」
「はい、お母さまとお話させていただきました。退院とその後について話したいと思います。いつかご都合の良い日がありますか」
「そうですね、明後日なら大丈夫です」
「では、明後日の午後2時はいかがでしょう」
「大丈夫です。今月末に退院と聞きましたが、日にちが決まっているのでしょうか」
「はい、28日になります」
3週間後だ、突然すぎて整理がつかない。
しかし、時間は待ってくれないようだ。整理はつかないが、
「わかりました」
とだけ答えた。