ストーマ訓練とケアマネージャーとの打ち合わせから4日後。
退院前の最後の日曜日に御袋の面会にきた。
いつもの部屋で待っていると、看護師が車いすを押して御袋が入ってきた。
先日より顔色は良くなっているようだが、点滴がさげてある。
「調子はどうかな」
「うん、少しはよくなってきた」
声に張りがない。転院してきた時の状態に戻ってしまっている。
「そっか。リハビリはしてるの?」
「うん、少ししている」
「立てるの?」
「足曲げとか」
ストレッチ程度のリハビリのようだ。
話はできているが、頭がボーっとしているみたいだ。
「あと数日で退院だね」
と退院後の話などをしてから
「元気になるために、たくさん食べてリハビリ頑張ろう」
と伝えた。
「うん」
「今日は入院生活最後の日曜日だよ。あと少しゆっくり休んで」
そう言って、面会が終わった。
翌日の午前、仕事中にケアマネージャーから電話がかかってきた。
よく考えたら、スマホを職場内に持って入れない仕事だったら、どうなっていたのだろうと思った。
緊急を要さない電話なら折り返しでもいいが、入院中は気になる。
職種によって変わるだろうが、お客様対応する窓口対応や、長時間の会議などでは難しいだろう。
私の仕事は、基本、私単独で動くことが多いのでその辺は自由で助かった。
しかし、ノーワークノーペイの原則で、有給休暇を使い切ってしまったら、収入は激減してしまう。
介護休暇を法で規定しているが、有給か無給かは会社の規定になる。
「先日の話を聞いて調べているのですが、ヘルパーと訪問看護は手配しています。しかし、デイサービスの受入先がなかなかありません。病院のリハビリの先生にも聞いたのですが、お母さんは誰かが付き添わないといけない状態ということなので、それに対応できるデイサービスを探しています」
「わかりました。引き続きよろしくお願いいたします」
電話を切ったあと、なかなか難しいんだなと感じた。
そして午後にまた電話がかかってきた。
「ヘルパーの手配をしているのですが、食材を買っておいてもらうことは可能でしょうか」
「それは可能だと思います」
「それはよかった。サービス利用時間を調整しても、食材購入の時間がとれないようでして」
「そうですか」
「また、配食サービスで対応は可能ですか」
「はい大丈夫と思いますが、同居する弟にも伝えます」
そう言って電話を切った。
『うーん、これは簡単にはいかないぞ』
とっさにそう思った。
確かに御袋が住む町は、介護施設が少ない。
しかし、高齢者は増えている。
実際、高齢の方が介護するような施設や事業所もある。
元気な高齢者もいるのでそれは助かるが、施設が少ないのは大変だ。
介護離職が多いこともニュースやネットで見たりしたこともある。
先日ケアマネージャーとの打ち合わせで、見積りを週末に送ると言っていて送ってこなかった。
理由は連絡のあったとおり、受け入れ先が見つからないからだ。
仕事の遅いケアマネージャーだなと思っていたが、どうやら違うようだった。
『いちいち頭にきて冷静さを失ったら自分が壊れる』とその時思った。