第51話「その日の前日」

僕たちは母を介護する

“その日”は後々の介護、御袋の身体問題に重大な日となる。

“その日”の前日の午前中。
相談員から電話があり、ストーマ訓練の日程を伝えられた。
弟(次男)に確認はしてないが、ダメなら私が教えればいいと思い、その日でOKした。
そして、先日、弟と話した内容からこちらから質問をした。

「家族で話し合いをしたのですが、弟が以前、病院である程度回復してから退院させてほしいと伝えたというのですが、それはダメだったのでしょうか。母もあと1ヶ月くらいは入院したいと言うのですが」
「そうですね。病状から、今月一杯での入院期間となっています。先生と相談しますが、可能であった場合、リハビリは現在より少なくなってしまいます」
「そうですか。それでも今、母が帰宅しても受け入れられる体制になっていません。介護保険申請も間に合わない状態で費用が自費となる負担や、同居する弟の仕事、別居している私の対応など考えると在宅介護は難しいと思います。施設に入ることはできないのでしょうか」
「そうですね、不安はありますよね。病院の関連施設に入所することもできます。その場合、ケアマネージャーはその施設のケアマネージャーなります。3か月程度施設に入り、在宅前リハビリもできます。施設の料金は月10万円程度になると思います」
「費用は少しかかりますが、一番は母の気持ちだと思います。母にも在宅で私たちが介護する難しさを理解していると思います」
「わかりました。お母さまと先生に相談したいと思います。またご連絡いたします」
一縷の望みを託し、「よろしくお願いいたします」と言って電話を切った。

午後に電話がかかってきた。相談員からだ。

「ストーマの交換訓練についてですが」
「はい、来週でしたね」
「はい、明日、ストーマの交換をするようで、もしお時間があれば立ち会わられるといいかと思いまして」
「そうですか・・・大丈夫です。何時ごろ行けばいいですか」
仕事だが何とかできそうなので時間を聞いた
「午前中、10時半ごろですがいかがでしょうか」
「わかりました、伺います」
「ありがとうございます。あと、お母さまに退院後の話を伺ったのですが」
「はい、どうでしたか」
「お母さまの意向は在宅がいいとのことです。ストーマの交換などが心配ではあるとは言われてましたが。介護サービスにより対応を希望したいと言われてました」
「・・・そうですか。わかりました」

母は在宅がいいのはわかるが、受け入れ態勢のできていない状態で生活ができるのだろうか。
そう言いたかったが、それは病院、医療の範囲ではないように思えた。
介護の分野になるのだろう。
ただし、障害者や介護の必要な者が医療機関を退院し、自宅に戻るとき、その時の相談はどうすればいいのだろう。

地域包括支援センターや市役所の福祉課などに相談するのだろうが、ケアマネージャーを病院にお願いしている以上、それを無視するのも失礼な気がする。
自分で調べるにもどこから手をつけていいか、わからない。
いろいろ考えたが、考えても仕方ない気がした。ケアマネージャーが決まってから聞けばいいことだ。