第49話「できない」

僕たちは母を介護する

次男の話はまだ続いた。

「近所に高齢の親と、俺と同じくらいの年齢の息子がいて、その息子がいつも怒鳴っているのが聞こえてくる」
「うん」
「自分も同じようなことをする・・・」

次男の性格は知っていた。
私はそれが嫌でここ数年、彼を避けてきた。
私に強く言ってくることはなかったが、御袋に対する物言いが激しかった。
御袋は『なんであの子はあんな感じなんだろう』と、よく言っていた。
私は何度か聞いていて、そのたびに『気にするなよ』とか、御袋はどう思っているか聞いていた。
しかし、特に気にするようでもなかった。
ただ、私は御袋も次男の会話のやり取り、言葉使いが嫌だったので、御袋に『あいつが居る時はここには来ないよ』と伝えていた。

私は次男に
「怒鳴りそうだと思ったら、その一歩前に止めれば?」
と聞いた。
「できない、なぜか怒鳴ってしまう」
次男の顔は泣き顔のようになっていた。
目も少し赤い。
「うーん」
私は、唸った。

私の持論だが、性格は変えられると思っている。
しかし、他人が変えられるものではないとも思っている。
もちろん、他人からの指導や影響で変わることはある。
でも、それは自分が変わると認識してのことなので、結局自分が変えるしかない。
他者からのアクションはきっかけにすぎない。
だから、いろいろな教えが存在しているのだと思う。
いろいろな教えがあるなら、他者からの影響で変われるのではと思うかもしれないが、一つの教えがダメで他を探す、求める事は自分の行動になる。

彼(次男)の場合はどうなんだろう。
以前、考えたことがある。
しかし、その時の私の答えは、《その人の人生》とし、それ以上は考えなかった。
なぜ考えようとしたか。
それは、もう少し生き方、考え方を変えればいいのにと思ったからだ。
でも、私は考えるのをやめた。
相談を受けたわけでもない。
そしてそんな彼の言動が嫌なら、兄弟とはいえ付き合わなければいいだけだ。
私の心を悩ませる必要はどこにもない。

今回についても同じだ。
彼は変えたいと言っているのではない。
自分は『できない』としている。

そして、続いて次男は言った。