2日後、午前中は仕事をし、午後から病院へ向かった。
時間は14時からだったが20分くらい早く着いたので、受付を済ませ時間まで待合室で待つことにした。
すると、時間前だったが相談員の方が来られた。
病院には医師や看護師、医療事務員、機能訓練指導員などいろいろな資格で働く人がいるが、この相談員は少し雰囲気が違った。
挨拶を交わすと、相談室へ案内された。
椅子に座ると、
「こんな狭い部屋しかなくてすいません」
と言われたので、
「いえ大丈夫ですよ」
と答えた。続いて
「お母さん、とても頑張っていますよ。今日もトレーニングされてました」
「そうなんですね。どれくらい回復しているのかな」
「動画を撮っているので、お見せしますね」
そう言って、持っていたタブレットをテーブルに乗せ、動画ファイルを再生した。
そこに映っている映像は驚きだった。
まず、御袋は自力でベッドから起き上がっていた。
その後、傍にある車いすに座った。
そして、歩行器を使い歩いていた。
どの動作もゆっくりだが、それでも前回面会した時とは比べ物にならないほどの変化だ。
「おぉ、すごい。ここまで回復しているんですね」
私は驚きを隠せず言った。
「そうですね。すごいですよね。お母さん良くなっていますよね」
相談員も同じように言った。
そして、動画を見終わり、退院とその後について話すことになった。
「退院後はご自宅で介護されますか」
「まだ全然わからなくて、どのような流れになるか教えていただけますか」
「そうですね。お一人で何でもできるということにはならないので、介護サービスを受けられることなると思いますけど、介護申請はされていないですよね」
「はい」
「急で大変申し訳ないですけど、介護認定は1ヶ月くらいかかると思います。なので、すぐに市役所に行かれて手続きをされた方がいいと思います」
「そうなんですね、わかりました。でもあと3週間で退院で、認定されるまでの間はどうなるのでしょうか」
「そうですね。少し間が空いてしまいますね・・・その間は自費になってしまいます。すいません」
退院がもっと早くわかっていたり、介護申請について早く知っていればと思ったが、まぁ過ぎたことは仕方ない。
「ここが終わったら、すぐに行ってきます」
御袋の用事をするときは、いろいろな御袋の書類は常に持ち歩いてる。半年間でかなりの重さになっているが、おかげで即対応ができる。
「あと、ご家族がストーマの交換ができるように訓練をしたいと思います」
「そうなんですね。前の病院で見たけど全然わからなくて。助かります」
「ですよね。不安ですよね。大丈夫ですよ。わからない時は動画を撮ってもいいですので」
「ありがとうございます」
「それから、ケアマネージャーはどうされますか」
そうだった、そこも必要だ。
在宅で介護が必要か相談するために地域包括支援センターという機関がある。
または市役所の福祉課だ。
そこで相談して、ケアマネージャー(居宅介護支援事業所)をいくつか紹介してもらう。
私はケアマネージャーを何人か知っていた。
しかし
「相談員さんにお任せしますので、誰か紹介していただけると助かります」
と伝えた。
「わかりました。こちらで決めておきますね」
「よろしくお願いいたします」
その後、少し御袋の近況などを伺い、一緒に面会に行った。
会うと、確かに元気そうだ。
肌のハリも良くなっている。
相談員さんと退院について話したことを伝えると
「退院できてうれしい」
と答えた。
「訓練の映像みたよ。だいぶ動けるようになったんだね。退院してからの不安とかはないかな」
「ない、多分なんとかなると思うよ」
「そっか。あと少し頑張って」
そう言うと
「頑張って訓練してますよね」
相談員もそう言って声をかけた。
帰る時、一緒に部屋を出た相談員さんに少し尋ねた。
「相談員さんは、看護師ですか」
すると
「社会福祉士です」
やはり、なんとなくそんな気がした。
おっとりした話し方や、間の取り具合が相談員に向いている。
「社会福祉士なら、医療現場だけでなく地域福祉もできますね」
「そうですね。今はここで頑張ってます」
「頑張ってください」
そう挨拶し、早速、介護申請へ向かった。