第41話「転院②」

僕たちは母を介護する

転院先のC病院は、B病院から車で30分ほどかかる。
弟は福祉タクシーに乗っているので私一人だ。
(退院の慌ただしさ)
(B病院の入院期間は45日間)
(その内、3日に1日程度の面会)
(そういえば、三男は来なかったな)
そんなことを思いながら車を走らせた。

予定時間より10分遅れてC病院に着いた。
先に出た福祉タクシーが、病院の前に止まっている。
しかし、御袋や弟の姿はそこにない。
駐車場に車を停め、病院へ入った。
待合室の真ん中に御袋が寝ているストレッチャーがあった。
弟もそばにいる。
「福祉タクシーはどうだった」
「割と中が広くて、そんなに揺れなかったよ」
「そっかよかった、それで今は?」
「受け付けに話を伝えて、待っているところ」
そう話していると、福祉タクシーの運転手が
「すいません」
と尋ねてきた。
「あ、ありがとうございました」
と礼をいうと、
「いえ、あの、支払の方は今でも大丈夫でしょうか」
そう尋ねられた。
「あ、ですね、すいません。おいくらですか」
そう言って金額を尋ねた。
思っていた金額より高かった。
タクシーであの距離だとして、そして、ストレッチャーで移動する福祉タクシーだと、そんなものなんだなと思い、
「あ、ちょうどあります。こちらを」
と言って支払った。

しばらくすると看護師が来た。
そして御袋をストレッチャーに乗せたまま、広い診察室に入った。
私たちもそれに従ってついていった。
比べるわけではないが、B病院との差を感じる。
建物、診察室内の物の配置・・・全く異なる。

看護師は御袋の血圧や体温を測りながら、名前や身体の状況について尋ねてきた。
その都度説明し、一通り終わると複数の書類を手渡された。
B病院でも書いたようなものだ。
入院時に必要な書類だろう。
今、必要なものはその場で書いた。

書き終わって、御袋に話しかけたりして待っていた。
すると男の人が入ってきた。
早口で挨拶するので、医師なのか、看護師なのか、介護士なのかわからない。
女性の看護師の対応からして、医師のようにも感じる。
目が悪いので名札を読み取れない。

男性は、病状発症時のことを尋ねてきた。
私と弟は、その日のことを説明した。

するとその男性は驚くことを言ってきた。