第36話「1ヶ月~苦悩と前進~」

僕たちは母を介護する

御袋が倒れ、手術してから1ヶ月が過ぎた。
たくさんの事が起きて、頭の中で整理ができていない。
最近はいろいろな事を考えたり、複雑な事を同時に行ったりしないからだろうか。

若い頃は仕事が忙しく、一つのことに集中して作業をするのではなく、同時に進行したり、他の事も考えながら行動していた。
働いているということに生きがいを感じ、疲れていたが充実もしていた。
年齢が上がり、先輩や上司という立場になると、さらに楽しくなっていった。
自分の考えでチームが動いたり、周りの意見を取りまとめたり、個人一人ではできなくても、グループで行動することによりできることの幅も広がっていくのがとても楽しくて仕方なかった。
しかし、40代を過ぎた頃、難しいことを考えたり、行動することが少しずつ億劫になった。
詳しい理由はわからない。
でも、50を過ぎた今、自分自身を振り返ると、一種の【逃げの姿勢】にあったことを感じた。

だから、今回の御袋の病気も一瞬、後ろ向きになった。
私の中に複数の感情が溢れる。
《弟たちが対応するだろう》
《いや私がやらないといけない》
《なんでこんなことになったんだ》
《子として当然やらないと》
《しかし疲れているしんどい》
《御袋はもっと大変だ》
《いろいな書類がありすぎる》
《できることをやろう》

正直言うと、共感してくれる、慰めの言葉をかけてくれる人が傍に居てほしかった。
しかし居ない。
そんな気持ちも溢れたが、とりあえず
《できることをやろう》
と思った。
無理をして倒れてもいけない。
できないことはできないと言おう。
一人で抱え込む必要はない。
そう気持ちを切り替えることができた。

そして、1ヶ月がすぎ、自分に
『よく頑張った、お疲れ』
と言った。

今度はストーマ学習がある。
また一つ新しいことを学ばないといけない。
『良い経験をしているな』
と自分を応援するように、心の中でつぶやいた。