第7話「人工肛門」

【僕たちは母を介護する】-7「人工肛門」 僕たちは母を介護する
【僕たちは母を介護する】-7「人工肛門」

「レントゲンを見ると腹部上部が白くなっています。これはガスと思われます。」
モニターに映し出されているレントゲン写真が、身体のどのあたりなのか分からなかった。しかし、先生が画面の上の方を指しながら言ったのでわかった。画面には下腹部から胸あたりが映し出されていた。

そして、腹部の左下の方を指で指しながら
「ここはS字結腸です。ここが破れていると思われます」
「何が原因でしょうか」
私は時間がない緊急事態を察しながらも尋ねた。
「開腹してみないとわかりませんが、ガンなどが原因で破れることもあります。高齢なので強い衝撃で破れることもありますが・・・」
「母は便秘と下痢を繰り返す体質で、最近も便秘気味で力んだときにそうなったのでしょうか」
弟が尋ねた。

私も若いころは下痢を起こしやすい体質だった。ここ数年は激しい痛みの腹痛はないが、家族の中では母と私は腹痛で悩まされている。
先生は少し間をとって
「そうですね。あまりないように思いますが、その可能性もあると思います。」
時間がないことから先生は続けた。
「非常に危険な状態というのは、腸が破れたことにより内容物、便が体内に侵入していると思われます。便というのはとても不衛生なものです。腸の外に便が入ると、細菌が他の臓器などに害をあたえます。」
さらに先生は続けた。
「昨夜11時に破れたとすると、すでに10時間が経過しています。全身に細菌がまわっていると思います。ただちに手術しなければなりません。よろしいですか」
私は今までの話の流れ、そして緊急事態ということも理解していたので、
「わかりました。お願いします」
と答え、弟も「お願いします」と即答した。

「わかりました。手術は12時から行います。開腹して、破れた腸を切断し、人工肛門をつけることになります」