第2話「通話の後」

僕たちは母を介護する
【僕たちは母を介護する】-2「通話の後」

「母が昨夜、腹痛を訴えるからC病院につれてきてる」
「どんな感じ」
弟の声がそれほど緊張感も感じられなかったことと、母は昔からお腹が弱く腹痛でトイレに駆け込むことが多かったので、少しひどい腹痛ぐらいかと思い聞いた。

「専門医が不在なので、今は点滴をしている。わりと落ち着いた状態にもみられるけど・・・朝8時に専門医がくるらしいのでそれまではわからないそうだよ」
「そうか、わかった。俺は、8時から地区の草刈り活動があるんだよ。でもスマホは持っているので、何か動きがあったら連絡してくれ」
「わかった」
「お前は大丈夫か?寝てないんだろう」
「診察室に居ても仕方なかったので、車にいたりしてたけどあまり寝てない」
「そうか、電話に気づかずすまんな。無理するなよ」

電話を切って、しばらくするといつもの癖がでてしまった。
私は、先の読めない事態が発生するといろいろと想像してしまう。
今回の場合、一つは『たいしたことなかったよ』という母や弟の声。
弟がまたいつものように、母に「だから(仕事で)無理するからだよ!」と注意するのが目に浮かぶ。
もう一つは『何か大きな病』
しかし、これはその時は何も思い浮かばなかった。
母はそれぐらい、精神力も体力も強い人だったからだ。

数か月前、母とこんな話をしたことがあった。
「お袋は本当に元気だな、体力もそうだけど、精神的に落ち込むことはあまりなさそうだね」
「お父さんが亡くなった時は落ち込んだけど、それ以外はないねー。精神的弱さというのが、私にはわからないよ」
「いやいや、生きている限り悩みや弱さはあるだろうけど、俺を含めて兄弟たち(母の息子たち)は、弱いねー。俺は弱さを明るさにして隠してるし、弟は怒りにかえている感じ。末弟は弱さに逃げているというか・・・専門家じゃないから、うまく言えないけど、お袋のように強くなれてないな」
「私も強いかどうかはわからないけど・・・いろいろ考えても仕方ないしね」
「そうだね(笑)」