御袋がこの病院に入院して45日目。
あっという間だったが、いろいろな事があった。
そんな事を思いながら、病院に着いた。
完全回復で退院なら、大きな花束で祝うところだ。
しかし、まだこれから。
そう気を引き締めて、病棟に向かった。
着くと、ストーマ業者の方が来られていた。
名刺をもらうと、肩書は営業だった。
会社名も全く知らない。
大きな会社なんだろうけど、世の中にはたくさん知らない会社がある、知らなくて当然だ。
彼はストーマのパンフレットを私たちに見せながら、いろいろ説明をしたが、全く頭に入らない。
ストーマを見たのも動画で1回と御袋の交換作業の計2回だ。
一通り説明されて、
「いかかがされますか」
と問われた。
「お恥ずかしい話でが、初めてのことでまったくわかりません。最初はお願いしてよろしいですか」
そう伝えた。
「そうですよね。わかります。では、こちらで手配しておきます。身体障害者手帳は申請中なんですよね」
「はい」
「よかったです。できたらご連絡ください。給付金で取り扱えるように手配いたします」
「ありがとうございます」
そう言って、およそ20分程度で打ち合わせは終わった。
待合室で待っていると、看護師が来た。
「今、準備しています。もう少しかかりますので、支払手続きをされますか」
「わかりました」
そう言って、私は会計に向かった。
支払が終わり、待合室に戻るとまた看護師が来た。
「こちらの書類にサインをしてもらえますか」
「はい」
転院するのも簡単にはいかないだろうが、書類がたくさんだ。
読みながらサインをしていると、ストレッチャーに寝かされた御袋が運ばれてきた。
時計を見ると、そろそろ出発しないといけない時間だ。
しかし、書類はまだ書き終わっていない。
「先に福祉タクシーへお連れします」
看護師がそう言って、
「誰が同乗されますか」
と言った。
私は次男に声をかけ、次男は御袋に付き添って福祉タクシーへ向かった。
サインが終わり、転院先に渡す封書を受領した。
とても慌ただしい退院だ。
忘れ物など確認する時間もないが、私たちは病室に入ってないので確認のしようがない。それにそんなに物はないだろう。
「お世話になりました」
そう頭をさげて、病院を後にした。